東北大学サイエンスシリーズ

2025年1月15日開講

東北大学サイエンスシリーズ第8弾
「暗号学の現在―現代暗号入門」

講師
[教養教育院]静谷 啓樹 総長特命教授
[データ駆動科学・AI教育研究センター]
酒井 正夫 准教授
磯辺 秀司 准教授
小泉 英介 助教
[福島大学]長谷川 真吾 准教授

開講日:2025年1月15日(水)
募集開始日:2024年10月9日(水)

 

講座概要

数千年の歴史をもつ暗号は1970年代以降に根本的で急峻な変革を遂げ、今日、暗号の科学と技術は様々な形で日常生活に深く浸透するに至りました。これを現代暗号と呼びます。この講座では現代暗号の原理と特徴、基本的な機能、社会基盤とのかかわり、そして近い将来に求められる暗号の機能について、要点を平易に紹介します。これにより暗号を切り口として、情報社会の現在と未来を垣間見ることにもなります。なお、現代暗号は数学的な理論に基づくものですが、できるだけ直観的な説明に努め、記法や概念を定義するときは高等学校「数学I」や「数学A」の言葉を使うよう配慮します。

第1週は、現代暗号の安全性の基礎となる数学的仕組みについて解説します。それが一方向性関数で、順方向の計算は容易ですが、逆方向の計算は困難という性質を持ちます。この性質に基づく代表的な暗号方式の例を学び、現代暗号の基本的原理への理解を深めます。

第2週は、前週の道具を駆使して、大規模で安全な情報システムを構成する際の部品となる様々な機能が達成できることを学びます。具体的には、印鑑に代わる署名や本人認証、データを暗号化したまま四則演算を行う秘密計算、秘密情報を複数人で分散して共有する仕組み、暗証番号を見せずに所持自体を証明するゼロ知識証明などです。

第3週は、いくつかの暗号技術の高度な組み合わせと巧妙な運用によって、地球規模の巨大な社会インフラが編まれている現状を学びます。具体的には、ウェブサイトの信頼性を担保するPKI、通信を保護するSSL/TLS、そして世界経済で存在感を増す暗号資産などに焦点を絞ります。

第4週は、現代暗号が抱える本質的な課題と、その解決への取り組みの現状を学びます。実は近い将来、量子計算機が本格的に実用化されると、現在は一方向性と考えられている関数が、そうではなくなることが判っています。そこで、量子計算機にとっても困難と考えられている計算問題を使って、新時代の一方向性関数を構成する試みが活発化しています。その代表例を紹介し、未来につなげて講座を閉じます。

※本講座は、2024年1月開講の第1回と同じ内容となり、課題の一部を変更しております。